遺言作成

1 遺言作成についてよくある悩み

遺言の作成に関しては下記のような悩みをもった方が非常に多いです。

  • 自分は遺言を作った方がいいのかわからない。
  • 遺言には種類があるみたいだが、どの種類の遺言を作成すべきかわからない。
  • 自分の作った遺言書は本当に実現されるのか不安。
  • 認知症の人でも遺言を作成できるのか?

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2 遺言作成とは

2-1 遺言の役割

遺言を作成しておくことで、民法に縛られることなく財産を自分の意思で処分できます。

遺言がなければ、遺産は法定相続人が遺産分割協議によって分割方法を決めます。

遺言は、自分で遺産分割の方法を決めたり、法定相続人以外にも遺贈したりしたい場合に有効な手段です。満15歳以上であれば作成が可能です。

2-2 遺言の種類

作成される遺言には、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言といった種類があります。

一般的に、自筆証書遺言か公正証書遺言が作られることが多く、秘密証書遺言は利用場面が限定的なためあまり使用されません。

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【関連記事】秘密証書遺言とは?作成方法からメリット・デメリットを弁護士が解説

(1)自筆証書遺言
メリット デメリット
  • いつでも簡単に作成できる。
  • 遺言をしたことを周囲に秘密にしておける。
  • 費用が殆どかからない。
  • 方式違反で無効とされるおそれ
  • 遺言書の紛失、自らの死後に発見されないおそれ
  • 家庭裁判所の検認手続が必要
(2)公正証書遺言
メリット デメリット
  • 専門家であ公証人が作成。
  • 原本を公証役場で保管。
  • 家庭裁判所の検認手続が不要
  • 遺言書の作成及び内容を第三者に知られる。
  • 費用と手間がかかる。
(3)秘密証書遺言
メリット デメリット
  • 遺言書の秘密を守れる
  • 作成に若干の費用と手間がかかる
  • 家庭裁判所の検認手続が必要

3 遺言の必要性

遺言を作成しておくメリットは、民法の規定に縛られることなく、自分の死後に思い通りに財産の処分ができることです。

  • 相続人間で承継する財産に軽重を付けたい
  • 相続人以外の方、団体へ財産を承継させたい
  • 相続人間の争いを防止したい

など様々な場面で遺言はその効力を発揮します。

家庭裁判所への遺産分割に関する処分の調停・審判の新受件数は、年間1万2000件を超え、今後も増加の見通しです。

このような状況の中で、遺言を残すことで相続に関する争いを防止しようと考える方が増え、公正証書遺言の作成件数は、年間約10万件であり、大幅に増加しています。

4 遺言を残した方がよい場合

遺言を残したほうが良い場合としては以下のような場合があります。

これらはいずれも民法の定める相続のルールだけではうまく解決できない場合が多く、遺言により遺言者の意思を反映した相続を実現できる場合です。

  • 自宅等の不動産が相続財産で大きな割合を占める場合
  • 自営業者の場合(事業承継)
  • 子どもがおらず財産を残したい人がいる場合
  • 兄弟姉妹の仲が悪い場合
  • 経済的に苦しい相続人がいる場合
  • 先妻、後妻ともに子がいる場合
  • 内縁の妻やその子がいるとき
  • 面倒を見てくれた配偶者、親族がいるとき
  • お世話になった団体、会社に遺産を譲りたい場合

相続問題は不動産の問題といわれることもあるように、不動産を所有されている方の相続で争いが起きることが多いです。また、親の相続がきっかけで、兄弟姉妹の仲で険悪になってしまった等の例が枚挙にいとまがないくらい多く寄せられています。

5 遺言を作成する流れ・ポイント・注意点

5-1 遺言を作成する流れ

遺言の作成は自筆証書遺言か公正証書遺言かで流れが変わります。それぞれの流れについて解説します。

①自筆証書遺言

自筆証書遺言は、紙とペンさえあれば自宅で作成できます。ただし、民法968条に規定されている下記の要件を守って書く必要があります。

  • 遺言書に記載する全文を自筆で書く
  • 作成した年月日を記載する
  • 署名・押印をする
  • 訂正部分は二重線で消し、押印する

自筆証書遺言は自宅で保管しますが、2020年7月より法務局でも保管できるようになりました。自筆証書遺言は、開封時に家庭裁判所の検認手続きが必要になります。

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②公正証書遺言

公正証書遺言は、遺言者の意思を口頭で確認した公証人が、遺言者に代わって遺言書を作成します。公正証書遺言は原則公証役場で作成を行い、証人2名が立ち会います。作成には下記の準備物が必要です。

  • 実印・印鑑証明書
  • 戸籍謄本
  • 財産を受け取る人の住民票(相続人の場合は戸籍謄本も必要)
  • 財産に不動産が含まれる場合は不動産の登記事項証明書と固定資産評価証明書
  • その他必要事項を記載したメモなど

作成した公正証書遺言は公証役場で保管されます。公正証書遺言の開封には検認の必要はありません。

5-2 遺言作成のポイント

遺言作成時には遺言執行者を決めておくとよいでしょう。遺言執行者とは、遺言の内容を現実にする責任を担う人のことです。遺言執行人の選任は遺言者が行え、遺言作成時に「〇〇を遺言執行人として選任する。」と記載すれば指名できます。弁護士など専門家を遺言執行人にすることもできます。

5-3 遺言作成の際の注意点

遺言で最も注意すべきなのは、法的要件の不備がないようにすることです。

公正証書遺言の場合は、要件不備のリスクはありませんが、自分で書く自筆証書遺言は注意が必要です。要件不備となった場合、遺言が認められません

また、遺留分についても注意が必要です。遺留分とは、法定相続人に最低限度保証される相続権のことです。

「〇〇に遺産のすべてを引き継ぐ。」など内容に偏った遺言書は、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあり、親族間で遺留分侵害額請求などの争いが起きてしまう可能性があります。

【関連記事】遺留分の計算方法とは?権利者の範囲や遺留分侵害の対処法も詳しく解説

6 弁護士へ依頼するメリット

遺言書の作成について不安な場合は、専門家である弁護士に依頼することで下記のようなメリットがあります。

  • とくに自筆証書遺言では、要件不備などで無効になるリスクを避け、遺言の実現可能性を高められる。
  • 弁護士は相続財産を正確に調査できるため、相続財産を漏れなく正確に記載した遺言を作成できる。
  • 状況に応じて、自筆証書遺言か公正証書遺言のどちらが適切かの判断をしてもらえる。
  • 公正証書遺言の作成時には必要書類を代わりに準備してくれたり、証人の手配をしてくれたりするため、負担を軽減できる。
  • 遺言執行人が法律の専門家である弁護士であれば、遺言執行の際に相続人が納得して応じてくれやすい。

7 費用

自筆証書遺言の作成に関して、基本的に費用は発生しません。しかし、法務局が遺言書の原本を保管してくれる制度である「遺言書保管制度」を利用する場合は、1件につき3900円の手数料がかかります。

公正証書遺言作成では、公証人に支払う基本手数料に財産価格に応じた加算額をプラスした料金を支払います。例えば、遺言書に該当する財産が100万円未満だと手数料は5000円です。1億円未満だと、43000円となります。

公証人に出張してもらう場合は、あわせて別途で交通費や日当が必要です。

8 遺言作成についてよくある質問

8-1 認知症の人に遺言書を作成してもらうにはどうしたらいいのか?

認知症の人でも「遺言能力がある」と認められれば、遺言を作成できます。具体的には、医師の診察を受けて遺言能力を証明できる診断書を作成してもらいましょう。その上で、法律上遺言書が無効にならないように公正証書遺言を作成するのがおすすめです。

8-2 一度遺言書を作成するともう変更できないのか?

一度遺言を作成していても、その内容は後から変更可能です。変更するには、新しく遺言を作成します。遺言が2通見つかった場合は、日付が新しい方の遺言が採用されます。

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